退職日のこと
肉体的にも精神的にも疲れきっていた私は、この仕事から解放される退職日を待ちわびていた。規定どおり退職日の1ヶ月前に退職願を出し、渋い顔をした上司がそれを受理すると、それだけで身体が軽くなったものだ。特に親しい同僚もいないが、人間関係に問題があったわけではなく、理由と言えば「疲れたから」。新しい仕事に就きたいという建設的な動機もないので、退職日を境に人生がバラ色に変わるわけではない。退職日の翌日から仕事探しにとりかかるつもりだ。だから、退職日は待ち遠しいが、退職日の先は不安で一杯である。
同僚は私の退職日は月末と思っているらしく、「今月一杯なんて寂しくなるわね」と言うが、実は退職日は25日なのだ。退職日に大仰にされるのは苦手なので、私も曖昧に笑ってやり過ごしている。長い1ヶ月が過ぎ、とうとう退職日がやって来た。朝礼で上司が私の退職を告げると、皆驚いていたようだが、とにかく今日でお別れだ。今度は終業チャイムが待ち遠しい。退職日の今日まで本当に長かった。
終業チャイムが鳴って、挨拶をして帰ろうとすると、先輩のOさんが休憩室から花束を抱えて出て来た。急だったのに花束を誂えてくれたのか。花束と共に課のみんなに「お疲れ様」と労われ、涙が出て来た。クールを気取った身勝手な私なのに…。最高の退職日、ありがとう。