退職後のこと
ひたすら働き続けて、気が付けば50も半ばを過ぎた。あと数年で定年退職である。大した役職でもないので、平凡なサラリーマン生活に結構満足している私は、退職後の具体的な計画もなく、ついこの間までは「退職後どうしよう」と考えたことはなかった。せいぜい「濡れ落ち葉」と言われない程度にのんびり過ごそうと思っていた。ところが最近、同世代の仲間と退職後の話をすることが多くなった。仲間は「退職後の夢」を熱っぽく語るのである。その時の彼らの顔は歳に似合わず、まるで少年のようだ。
コーヒー好きのMは「退職後は喫茶店をやる」そうだ。蕎麦打ちが趣味のKの退職後の計画には、少々驚いた。北海道で農業をやると言う。自給自足程度とは言うが、既に土地も買ってあるそうだ。MもKも結構前から退職後の計画をたてていたらしく、話に淀みがない。のんびりサラリーマンをやっていた私は少なからずショックである。妻も私同様のんびり人間だから、妻の口から「退職後どうするの?」という言葉が出たこともない。
改めて、これという趣味も持たずに仕事人間を気取っていた自分が情けない。彼らみたいに退職後の準備もしていないことに焦りを感じた。退職後の自己像が全くないのだ。考えてみれば退職後の人生は結構長い。一時凝ったプラモデル作りは、何か退職後の計画に役立つだろうか…。